強面「市民ミュージアム」君、懐のど真ん中。

 
僕らの野外稽古場、基本的には市民ミュージアム前の広場。巨大トーマス式溶鉱炉がオブジェとして飾られ、その個性を主張している。市民ミュージアム、昼は実に威風堂々、夜になるとちょっと怖くもなってくる。かなりの強面だ。
この建物を使い、それを擬人化し、対:巨大建造物との新しい関係の構築を試みた。面白い実験。塾生も新たな発見を楽しんでいた。まとまらないけど挙げてみる。
 
【ちょっと面白かった今日の発見・再認識】
・他者との距離感は、実は双方の個人的錯覚にすぎない。実際にはもっともっと近い。
・関係する相手の懐に飛び込みたい、その衝動を邪魔するのは拒まれたときの恐怖感。硬質であり不変の巨大建造物を相手にした場合でも、人は拒絶の恐怖を実感する。つまりは、錯覚の実感。
・錯覚だけど実感してしまう人の感覚、錯覚を判断基準にして絶対視してしまう誤り。
・他者の懐のど真ん中に飛び込みたい。その中で、他者の魂の中心に命の火をともしたい、人の中に入りこみたい、そんな一種傲慢かもしれない欲望が俳優の衝動。
・錯覚と戦い、いざ懐の中心へ。その意志がなければ意味がない。観客の懐の手前での熱演は、恐怖への屈伏。観客の懐のど真ん中が俳優の真の演技エリア、ステージ。
 
それに加えて、
【野外における稽古の新ルール提案と意味。】
・さっき面白いと思ったことは、次回のトライでは絶対にやらない。コピーを避けるため、さらに愉快なことの発見のため。
・野外ではいわゆる雑音も多いから集中力を高め指向性の聴覚を研ぎ澄ます、のではなく逆に、全方向対応の無指向性集音機としての耳を持つ。排除からはなにも生まれない。全受容こそ創造の鍵。対極の発想。
・対:巨大建造物。硬質なものは冷たい感じ、冷たいものはだいたいちょっと嫌な感じ、などという画一的な先入観や体験的感覚はとりあえず横に置いておいて、そのものはそのものとしてまず受け入れる。その他、過度の緊張など自分にとって好ましくないと思われる感情もまずはすべて受容。すると創造への変化が生まれる。
 
野外稽古は、楽しい。