作品紹介

以下は、制作部がつくってくれた「恭しき娼婦」の作品紹介です。
  
  
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)第37回公演
シェイクスピアではない作品シリーズ”第1弾
ジャン=ポール・サルトル作『恭しき娼婦』
〜譲れないものを失うことのファルス(笑劇)〜

芥川比呂志訳 彩乃木崇之演出
 
「恭しき娼婦」は、フランスの哲学者であるジャン=ポール・サルトルにより書かれ、1946年に初演され、社会そのものが抱えもつ矛盾と人間の尊厳が対比された不条理劇の傑作です。
 
生きるということは、平坦な道をまっすぐに進むものではありません。悪天候、迷路、運や不運、そして強者と弱者。そうした困難に向き合いながらどんな状況下においても命をつないでいく尊さ。それを人は「希望」と呼ぶのではないでしょうか。
  
娼婦リッジーの不器用なまでにストレートな生き様。潔さと孤立。「恭しき娼婦」という戯曲は、娼婦であるヒロインを通して人間の尊厳を哀しくも力強く主張し、さらに憐れみをもって笑い飛ばすファルス(笑劇)に仕立てられており、不条理を希望にまで昇華させています。
「人間の尊厳」「譲れないものを失うことのファルス(笑劇)」。ASCではこの「恭しき娼婦」という作品を、シェイクスピア作品のもつ「人間そのものに対しての愛情」により培ってきた方法論、シェイクスピア・カンパニーであるASCならではの切り口で、「生きることの希望」へと昇華させていきます。
 
不条理、実存主義という言葉で語られることの多いサルトルですが、ASCではこの「恭しき娼婦」という作品に、ASCがこれまで数々のシェイクスピア作品の上演の中で追い続けてきたテーマを見出します。それは、人間そのものに向ける視点とも愛ともいえることでしょう。
  
全裸にもならねばならない今回のヒロイン役娼婦リッジーには、日野聡子を配役。彼女は、シーズンメンバーとして1年、またASC演劇研究センター生として3年、ASCにおいて延べ4年間研修を積み、またASC第34回公演「オセロー」でのデスデモーナで大きく成長。その日野が、文字通り体当たりの全力で演じます。
  
シェイクスピアという名を掲げ、過去12年間シェイクスピアの上演を重ねてきたASC。そのASCが今回初めてシェイクスピア以外の作品を上演します。
ASCの「恭しき娼婦」に、是非、ご期待ください。