“多呂さ”さんからのメール。

ご本人からの許可が下りたので、昨日のブログを書く動機となった“多呂さ”さんからのメールとご承諾いただいたメールを掲載します。“多呂さ”さん、ありがとうございました。
 
【4月20日】
彩乃木 代表
「ペリクリーズ」お疲れさまでした。
不思議な芝居でした。
なんとなく演劇ではないみたいな感じ、でした。
本番ではなく、稽古を観ているような感じです。
そもそも、ガワー(でしたっけ?狂言回し役)はどうするんだろう?と思ってました。
この役は省略可能ですし、あのメンバーではおそらく交互にやるか、一行ずつ渡り台詞にするか、と思っていました。
・・・・・実際はそのようでしたね。そして始まった、その第一幕の始まりは、意表をつきました。リハーサルか、雑談かと思っていたら、もう始まってましたから。
しかし、全体として楽しくやっていたのが、よくわかりました。でも役者の皆さんは本当にたのしかったのでしょうか?
 
終幕の船内でのペリクリーズは代表ご自身が演じられました。
あれが演劇ですね。たいへんな演技力だと思います。圧巻でした。
他の人と何が違うのか、と云われるとよくは定義できません。演技がうまい、っていったいどういうことなんだろう?
と、終わってからつくづく考えています。いまさらながらですが。つまり彩乃木代表の演技力について考えている訳です。その違いは何でしょうか?
正直にわかりません。・・・・・というようなことを帰りに一緒に観た娘と喋りました。で大人として何と答えたか、というと、
人生とか、生活とか、そういうことだろうと思います。どう生きるか、ということを考えながら表現していくことを心がけていると、あのような存在感のあるうまい演技ができる、ということだと思うのですが、そういえるだけの蓄積がこちらにないもので、何とも云えません。
・・・・・というようなことを娘には云いました。
 
今回は演出家が演技指導しながらリハーサルがそのまま本番になったようなASCでした。ある意味で有意義でした。若い人たちの荒削りな溢れるばかりのエネルギーを目の当たりにして、新鮮でした。
シンプルな演出方法は想像力をかき立てられました。
ありがとうございました。
 
多呂さ
大麦親父乳酸脂肪
  
【4月21日】
彩乃木 代表
返信ありがとうございます。
また、PCの“代表の徒然”でメールの全文引用を言及されていますが、こちらは構いません。
もっと推敲したものを送信すればよかったです。それにもっと書きたいことがあったのに、読み返すとずいぶん抜けています。
でも、それはそれでよしとしましょう。
どうぞ、お載せください。
・・・・・・
それとは別に、追加でいくつか。
 
代表の云う、「覚悟」は、舞台(イタ)に乗る前に、どれだけのことを積み重ねられるか、どれだけの抽斗を持つことができるか、どれほど自分を磨けるか、という、つまり“自信”に裏付けられたものですかね。
そうであれば、それはおっしゃるようにある程度年齢を重ねないと出てこないことでしょう。
膨大なせりふと簡単なセットでしかも出ずっぱりのシェイクスピア劇は、若い人にとってはハードルが高いです。彩乃木代表ほどのキャリアがないと演技で人を魅了できませんね。若い彼らにはあの幕での代表の背中はさぞ大きく映っていたことでしょう。今回の経験が彼らの貴重な抽斗のひとつになることを願ってやみません。
  
今回の観る側の立ち位置、気持ちとしては、若い人たちの溢れるエネルギー、決して枯れることがなく常に豊富に湧きだしてくるあのエネルギー、せりふをとちっても演技でしくじっても、それでも前に突き進むあの気力胆力意志力。そういう諸々の正方向に伸びてゆくベクトルを受け止める役でした。それはとても楽しかったです。快感でした。それはこれでもかこれでもか、と自己の存在を見せつける彼らに対して、こちらは「あなたの存在を認めます」と云うことだし、もっと突っ込んで云えば、「あなたたちのことが好きです」、というメッセージを観る側が演じるみんなに、伝えざるを得ないような、そんな感じでした。決して対決するのではなく、交流する感じです。考えてみれば、ASCのお芝居にはそういう形の関係が多かったような気がします。対決ではなく交流。交歓。そういう意味で観る側としてもとても意義深いいいお芝居でした。
かさねがさね、お疲れさまでした。また、ありがとうございました。
では、また。
 
多呂さ
大麦親父乳酸脂肪