爆笑の美人。〜沢海陽子という女優〜

実に素敵な人だ。沢海陽子(そうみようこ)さんという女優。
思いっきりの良さでは、今回の稽古場で首位争い、女性陣ではもちろん単独トップ。「まずはベタでやってみましょう」という僕の提案に、それはもう極端なまでのベタでやってみせてくれる。稽古場大爆笑。一見スレンダーで長身なクールビューティ陽子が、だからこそかもしれないがタガを思いっきりはずすとき、予想以上の、そして予想外の行動の連続で目が離せない。発見がたくさんある。
 
それに彼女は、すこぶる優しい。その優しさの質に実はびっくりした。「私男っぽいんです」と本人曰く。うん、確かに。女性特有の優しさとは一味違う。本人が言うように男性っぽいのかもしれないが、それともまた違う気がする。そうか、そうか、男女両方の優しさを兼ね備えているのかもしれない。優しさの両性具有。
(バッサーニオも性的には両刀使い、とこんなところで沢海さんと比べてはいけないな)
 
沢海さん独特の優しさが垣間見られる瞬間は、たぶん彼女も意識していないとき。演技中にも、休憩中にも、僕は幸運にも何度かその瞬間に出くわしている。こういうところが演出担当の役得。その優しさオーラが稽古場に広がる瞬間、沢海さんは少女のような表情になる、笑顔のときでも困っているような芝居のときでも。そして僕は、とてもハッピーになれる。
 
話は変わるが、先日いきなりロレンゾ役を今やってもらっている福岡幹之君がジェシカ役の荒井真鈴ちゃんに濃厚なキスをした。もちろん稽古中だが、台本にはそのような指定はない。ジェシカに恋心を抱くラーンスロット役の秋山祐司君はアゼン、大西伸子はなぜか大いに憤っていた。ちなみに大西伸子は召使い役をやっている。なぜ大西が憤るのかは不明、あ、キスという行為自体に対する単なるヤキモチか(笑)。
 
若者は、すぐに稽古場で恋に落ちる。それを通称「恋の稽古場マジック」といって僕ら中堅どころはからかっている。芝居の気持ちが本気にスライドしちゃうんだよね、僕も昔覚えがある。
が、現在の僕、実はちょっとまずい。
演出の役得とはいえ沢海さんの魅力ビームをすべて真っ向から毎日浴びていると、若者たちをからかってもいられなくなってくる気がする、そんな今日この頃だ。。。
本番、お愉しみに。