“あやのぎ塾”開講 【新生ASC白書 その3 あやのぎ塾】

次回春公演について書く前に、新体制についてもうひとつだけ。
 
ASC演劇研究センターは、一時休止します。
劇団であるASCの若き担い手、プロの演劇人養成を主な目的としてきた
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)附属演劇研究センターは、
9期生をもって一時その活動を休止します。
 
なぜか?
前回述べた劇団としての新体制作りのため、ということもあるのですが、
一言で述べるならば、人材が育たなかった、ということです。
その責任は、ASCの代表者である僕や副代表であり研究センター長でもある
菊地一浩にあることはもちろんです。
が、そのシステム自体にも問題があったように思います。
 
ASC公演の本番の舞台に上げることによる少数精鋭の実践教育が主眼だったが、
指導する側にとっても研究生にとっても、正直いうと無理がありすぎた。
ASCの舞台への研究生の抜擢、というそのこと自体に無理がある。
平たく言えば、大きな役をやらせすぎた。
にもかかわらず、僕は作品の水準を下げることはしなかった。
そのプレッシャーに耐え切れない者がほとんどだった。
結果、本人にも観客にも、よくない。
 
「研究生だからといって、本人のためだからといって、
 簡単にASC公演に抜擢しないほうがいい」
と、これまでもスタッフの方など親身になって心配してくれた。
安易にそうやっていたわけではもちろんないが、
その意味が痛いほどわかったのも、作品が求める要求の高さ、
あらゆる妥協が許されなかった「タイタス・アンドロニカス」だった。
 
そんなわけで、ASC演劇研究センターの活動を当面休止します。
つまり、研究生制度を一時なくします。
よって、在籍していた研究生は、寂しいですが全員解散です。
これまでありがとう。いつかまたどこかで会おう!
 
そして、その発展的解消の次なる展開として、
“あやのぎ塾”を開講します。
私塾です。ASCとは直接的な関係はありません。
ASC公演にあやのぎ塾の塾生が出演するときは、
基本的にはほかのシーズンメンバー同様、オーディションを受けます。
つまり、僕の教え子だからといってこれまでのように、
「未熟なままASCの舞台に出てきますよ」じゃなくなりました。
 
で、あやのぎ塾が目的とするものは、
ASC演劇研究センターのそれより少し広義な事柄が含まれます。
 
1.次世代の演劇界を担うプロの俳優の養成。
2.シェイクスピア演劇の実践的研究。
3.シェイクスピア劇の普及と普及と普及。
 
あやのぎ塾の切なる願いの筆頭は、3.です。
シェイクスピア劇を一般にもっともっと広めたい!
そのためにこそ、1.と2.もある。
なので、あやのぎ塾では
プロフェッショナルを志向する若者の養成だけではなく、
たとえばシェイクスピア朗読の会と評せばいいのでしょうか、知る人ぞ知る
シェイクスピアの森」のようなすばらしい活動もぜひ真似たい。
シェイクスピア作品に触れてみたい、あるいは研究してみたいという希望者の方々、
「日本語によるシェイクスピア劇の物言う術」とは何だと興味のある方々、
老若男女問わず、どんどん受け入れます。
一緒に、シェイクスピアを楽しみましょう。
 
その主旨のため、あやのぎ塾入塾には実技審査はありません。面接のみです。
また入塾は、随時OKです。
これらはASC演劇研究センターとの大きな違いです。
 
基本年限は1年間。その後の受講更新も可能。
月単位でのコースもあり、夏期または春期集中合宿も別途あります。
マンツーマンコースだけは、ASC演劇研究センターから引き継ぎ、あります。
また、外部の活動についての制約は一切なし。
門戸は広く、がしかし本番の舞台への道は厳しく、です。
 
あやのぎ塾はすでに今年1月より開講しました。
ASC演劇研究センターのメンバーから2名だけが入塾。
研究センター丸3年間の訓練を12月に終えた日野聡子と、
「タイタス・アンドロニカス」時に失態をしでかし謹慎処分となった大西伸子もまた、
本人猛省し、条件つきながら入塾しました。
 
あやのぎ塾については、近々公式サイトを立ち上げ、
WEB上でその詳細を告知していきたいと思っていますが、
取り急ぎお問い合わせの方は、ASCまでメールにてご一報ください。
 
では次回こそ、4月公演の告知を。