自分の登山口と登山道。

研究生の阪口が、菊地演出で外部公演に出演した。
文学座の後輩高橋耕次郎くん率いる双の会「祈り」。
http://d.hatena.ne.jp/skmiyu/searchdiary?word=%2a%5b%b3%b0%c9%f4%bd%d0%b1%e9%5d
本番を観にいって、正直驚いた。
出番は少ないながら、阪口がいい。とてもいい。
 
前回の「オセロー」新人チームで初舞台を踏んだ彼女、
厳しいプロの稽古場で全く方向を見失い、右往左往していた。
しかし、彼女には根性があった。
方向性を失いながらも、本番期間中どんどん役をつかみ始めた、
もちろん技術的にはまだまだではあるが。
頼もしいと感じた。
 
そして、今回の外部出演。
双の会の稽古場は、ASCよりさらに厳しい。
そして、外部での出演である、精神的にはもっと追い詰められる。
その状況下で、本番で成果を出していた。
手前味噌ながら、素晴らしい。
 
阪口は、ASC公式サイトのメンバープロフィールでも明らかなように、
http://www.k5.dion.ne.jp/~asc/profile/profile_sakaguchi.html
27年間勤め上げた高校教諭を早期退職、プロを目指し現在修行中。
僕より年上である。
 
ASCでの演技レッスンのとき、僕はよく山にたとえて指導することがある。
頂上はもちろん、だれもが認める素晴らしい名優!
そして、頂上は当然のことながら一つ。
しかし、登山口や登山道はたくさんある。
登山口や登山道は、方法論であったり技術であったりする。
 
初心のうちはどの登山口から上ればいいかなど分からない。
だから指導者のいう登山口を登ればいい。
ASCで言えば、彩乃木登山口や菊地登山口か。
これがまた、真反対だったりする。北口と南口。
僕のレッスンと菊地のレッスン、レッスンごとに登山口を変えればいい。
要するに、へたに懐疑的にならずに言われるがまま登ってみればいいのだ。
道はある。彩乃木登山道であり、菊地登山道だ。
 
で、そのうち分かる、その登山道は所詮、僕や菊地のものということが。
その時、熟考する。自分の登山口と登山道はいったいどこか。
 
そして、途中まで登った山を一度下山してみる。
で改めて、登ってみる、登山口のないところから。
大丈夫、ある程度までは割に簡単に登ることができる。なぜなら、
指導者の登山道をこれまで登っていたから。それなりの技術が身についている。
しかしまだ、自分独特の技術ではない。
 
未知の登山口から未知の登山道を登る。
そこには入り口の標識もなければ、もちろん前に道などない。
彩乃木術や菊地術を使って多分山の半分くらいまではすんなり登ることができる。
ま、富士山を5合目まで車で登るようなものだ。
 
が、そこからが険しい。すこぶる険しい。
そこから、自分だけの本当の技術が身についてくる。
自分だけの術、それをひねり出さないと先へは進めないのだ。
 
阪口は、早くもその事実に気がついたのかもしれない。
そして、阪口の留守中企画を懸命に推進してきた「アンダンテ」のメンバーも、
http://www.k5.dion.ne.jp/~asc/stage/andante_maeuri.html
まさに今、自分のたちの登山口を確実に見つけつつある。
 
僕や菊地も、まだまだ頂上に到達できていない。当たり前だ。
頂上は、実はどんどん高くなる。
いくら登り進んでも、見上げれば頂上は、やはりいつもはるか上。
 
みんな、ガンガン登ろうぜ、自分の登山道を!