人の真価。

ある緊急事態が、最近勃発してしまった。その要因をつくってしまった責任の一端は、僕にもある。関係者4人。車の単独事故、ブロック塀に突っ込む。塀は大破。アクション映画さながらに、結構派手な事故現場。だが結果的には大事に至らず、物損のみ保険で片がつく。そして各自、いろいろな収穫があった。
 
非常時にこそ、その人の真価や日頃考えていることが、行動という形を通して鮮明に現れてくる。もうそれは言い訳のしようがない。厳然たる事実とそれに対する本能的な反射行動。個性。強烈な事実は、いいも悪いもなく受け入れるしかない、受け入れざるを得ない。そしてまた、その受け入れ方にもさらに個性が現れる。速度やレスポンスが違う。人間的な成長段階がくっきりと現れる。
 
お芝居の稽古もライブだから、いってみれば予想外の非常事態の連続。だから稽古は面白い。俳優の人間性が手に取るように分かる。もちろん、自分も丸裸にされる。フィクションなのに、なぜだろう。いや虚構だからこそ、逆に真実があぶりだされる。ただ現実とちがって稽古の場合は、フィクションゆえに言い訳もできるし、分かっていなくても分かったふりもできる。
だが、今回のような現実の突発的非常事態の場合、言い訳のしようがない。目の前の壁は崩れ落ちてる。繰り返すが、受け入れるしかないのだ。
 
「変えることができなければ、受け入れるしかない。」
これは、ある知的障碍の子どもさんをもつお母さんの言葉。
受け入れるまでに人生の大半の時間を費やすか、受け入れてから先の人生を豊かにするか。これも個性につながってくる。
 
演技者たる僕らにとって、事実を瞬時に受け入れる訓練は最高に意義がある。
すべては、現実を受け入れることからしか始められない。