場の気。

“あやのぎ塾”のレッスン会場は、神社。
川崎市中原区にある歴史のある由緒正しい新城神社
その境内の一角にある開放的空間「新城クラブ」。
現在は“あやのぎ塾”のレッスンのみこの会場で行っているが、
以前はASCの本公演のリハーサルもここでやっていた。
ここでたくさんの素敵な作品が生まれた。
 
なぜ神社で?  
新城神社、昨今では珍しく日々の参拝者が実に多い。
夜など冬なのに裸足でお百度を踏む年配の方を何人か目撃したほど。
また、民俗芸能保存会なるものもあり、その芸能で日本全国に出向き、
プロさながらの報酬を得る伝統芸能集団の母体もここ。
  
2000年の末に結成当時から5年間ほど所有していた
日本橋の稽古場(8階ビルの4階)から、
稽古場とそれに事務所自体も現在の川崎市中原区に移転。
そのとき見つけたのが、新城神社の新城クラブ。
神社の総代の方々はじめ、実に演劇的な人たち。
そして、掃き清められた境内の中にある開放的なスペース。
僕は一度で気に入った。
 
そこで初めて創った作品が、「じゃじゃ馬ならし」。
大成功を収めた。
今思えば、ここで創作した作品が、ASCの12年間のうち、
最もASCらしい作品群となっているように思う。
つまりは、ASCの底力と誇りの核になっている。
 
タッパもあり壁いっぱいの窓。
窓を開ければそこは神木が見守る広い境内。
とにかく気持ちがいい。
 
窓を閉めていても窓そのものが大きいので
中でやっていることは基本的に丸見え。
参拝者やお宮参りの人たちが、不思議そうにこちらを見る。
近所の子供たちが境内で遊ぶのに飽きると、窓にはり付き覗き込む。
それらも実は狙い。
シェイクスピアをとにかく身近に感じてほしい。
 
気持ちがいいことは、本質的に正しい。
気持ちがいい空間は、「気」がいい。
 
残念ながら新城クラブは、今は本公演のリハーサルでは使えない。
スケジュール的な問題。
神社の施設は、みんなのものだからね、やっぱり。
 
でも新城クラブに匹敵する「気」のいい稽古場を3年前にもう見つけてある。
レインボーコートスタジオ。参宮橋。
ここ3年の間で何度も使わせていただいた。
このスタジオは、オーナーである井口恭子さんの
演劇への深い愛情が「気」として宿っている。
というより、どんどんその「気」が増しているように、
先日今年になって初めて伺ったときに感じた。
 
場の「気」を良くも悪くもしてしまうのは、人。
ということはやはり、人の持つ「気」が一番大切か。
空気が読めない人のことをKYというらしいが、
そんな人は「気」が空っぽに近いのかもしれない。
だから空気か。