「気」を持つ空間、川崎ファクトリー。

  
連日熱い稽古が進んでいる。
実に熱い。
今回は吉田鋼太郎さん率いる劇団AUNから4名、
また文学座の演出家富田稔英さんのご紹介で6名の
男性キャストがシーズンメンバーとして参加してくれている。
これだけ多くの客演陣が参加してくれるのはとても久しぶりだ。
ASCメンバーとのジョイントで、互いに刺激を受けること大。
異なる環境で育ったもの同士のセッションは、本当に楽しい。
稽古がのっけから活性化してきている。
誰よりも僕が嬉しがっている。
鋼太郎さん、富田さん、本当にありがとうございました!
 
また、稽古が活性化している要因は稽古場の磁場にもある。
川崎ファクトリーという創造空間が、実にすばらしい。
先日もわれらASCも参加している「アートセッションかわさき2007」というイベントの
レセプションに参加させてもらったが、
芸術家が集う磁場なるものがこの川崎ファクトリーにはあるようだ。
http://www.owat.net/ask2007/index.html
http://ask2007.exblog.jp/
 
川崎ファクトリーという場所が持つ魅力については、
阪口や大西のブログでも触れてくれているので、
http://d.hatena.ne.jp/skmiyu/20071003
http://d.hatena.ne.jp/skmiyu/20071005
http://d.hatena.ne.jp/airabuyu/20071004
http://d.hatena.ne.jp/airabuyu/20071005

ここでは、今回の「タイタス・アンドロニカス」上演に直接関係ありそうなこと、
つまり今回の演出で僕がこんな風な空間にしたいなぁ、と思っていることも含めて、
ちょっとネタバレ的に、川崎ファクトリーを紹介します。
 
オーナーの渡辺治氏は一級建築士。そして、川崎ファクトリーの2階がその事務所。
渡辺氏は、芸術活動すべてに造詣が深くまた氏自身も精力的に参加している方。
都市設計は建物だけではなく、芸術や環境問題すべてが大きく関連している。
渡辺氏は、現在も地域の環境問題に関し、行政側にたいして
具体的に問題提起、解決に向けて地域をあげて活動中。その中心人物。
廃校となった川崎南高校の大規模商業施設化の大問題。
   
また、浜川崎の町中の電信柱に、地面から約1m 位のところに反射テープが貼ってある。
何年後かに温暖化のためにそこまで海面が上がるとのこと。
川崎ファクトリー発信の警告活動。
 
さて、川崎ファクトリーは、もともと工場だったものを改築したもので、
いかにも工場という外観とはまったく異なった内部は高さもあり、
素敵なアトリエのようなとても興味深い素敵な空間。
とは言いながらも元は工場だったため、備え付けの大クレーンがあったりして、
これがまたなんとも想像力と創造力を高めてくれる。
使いたくなるなぁ、劇中で。
 
また全面ガラス張りの中2階何ぞもあり、実に立体的な演技プランが実行可能。
既製の劇場にはない劇体験を約束します!
また、アートや音楽等の公演も行われているところなので、
(ライブだけではなく、なんとオペラも上演したとか)
工場という無機質なイメージの中に、なんともいえない温かみがある不思議空間。
稽古初日当日早めに訪れると、床いっぱいに力強い「書」が置いてあり、圧倒された。
この書は、さらにこれから何点も書かれて、
「アートセッションかわさき2007」の作品群のひとつとして、ある大きな工場の外壁に展示され、
浜川崎という臨海工業地帯の町を飾るのだとのこと。
外壁じゃなくて、「タイタス・アンドロニカス」の舞台美術にしてくれませんか?!
 
それになにより、本番の会場でずっと稽古ができるなんていう幸運は、千載一遇のチャンス。
オーナーの渡辺さんは、「好きに自由に使って」と。
使い方に関して何をうかがっても、「自由にして」との答え。
あんまりにも自由だと、逆にいろいろ考えてしまうのも面白い。
以前日本橋に劇団のアトリエを持っていたASCが、
ここ川崎で再びアトリエを持てた、ってな感じな嬉しさ。
ここを紹介してくださった「港町シェイクスピア」の増留俊樹さんにも、
この場を借りて、本当にありがとうございました。
 
とにもかくにも様々な実験が可能となった。
で、まず手始めに客席は、演技エリアをぐるっととり囲む三方向にひな壇で組んでみた。
いわゆるコロシアム(スタジアム)形式。(とっても小さいコロシアムだけど)
結果、観客と大接近、とても観やすい。抜群の臨場感。観客も出演者?
客席数は、銀座みゆき館劇場とほぼ変わらず90席弱が組めた。
また、みゆき館では使えなかった本火・本水などをはじめ、
小道具などできる限り「本物」を使いたいなぁ。
 
『タイタス・アンドロニカス』は非情な残酷劇だけど、
そこはもちろんASCらしく、美しくやる。
これは僕の中での必須条件。
 
いま、本当にたくさんのアイデアが僕の頭の中で、
稽古場である川崎ファクトリーの内部で、
そして共演者の一人一人の胸の中で、
大きく渦巻き誕生のときを待ってる感じ。
ワクワクドキドキな、生まれ出る直前の高揚感。
 
あ〜、早く初日を迎えたい!