ゆれる中学生

2011.10.22
文化庁ワークショップの報告・ゆれる中学生
(この記事は、助手として同行した日野聡子のブログより転載したものです)
 
平塚市立 神明中学校の演劇部へ。
文化庁「子どものための優れた舞台芸術体験事業」として、全3回のワークショップ。
神明中学は2度目である。
今回は、【平塚市中学校演劇発表会】に向けてだ。いわゆる地区大会。
彼女たちが選んだ作品は、『森のあるこうえん……』。
本番は、去る7/21。
私は彩乃木さんの助手として6/4・7/2、
そして、1位&個人賞受賞という快挙の地区大会本番7/21、
来る文化祭(10/27)と県大会(12/3・4)に向けての10/2に、行ってきた。
その記録である。
 
まずは、事前に台本が送られてきて目を通したのだが、
「難しい本選びやがったなあ。うへえ〜。」
だった。
なんつーか、なんというか、なんといいましょうや、
あたり前の、それも大事なことを、説教か?みたいな感じで、木とか虫とかが、楽しく、書いてあって、書き込まれていないように私には見え、いやいや、実は隠れた名作か?、私が読めていないだけか?、それにしちゃあドラマはどこだよ、どう演じろっていうんだよ、・・・、・・・、、
まだ、続けます?
 
皆はなぜこの本を選んだのか。
前回のワークショップで扱った『べっかんこおに』は、初見で泣けた。
この本を選んだ彼女たちをすごいと思ったし、取り組む姿勢や、演じる姿・声は、本当にダイレクトに響いてきた。
大人な私は、こんな陳腐な言葉でしか言い表せないくらいですよ。
それで、一転して、『森のあるこうえん……』を選んできた理由が知りたい。
 
5ヶ月ぶりの演劇部は、進級し、新入生が10人以上入ってきていた。
この前まで1年生で末っ子みたいだった子たちが、先輩として立っていることに、新鮮な驚き。くすぐったい。
12才〜15才って、面白いワ。
まるで三姉妹。
最年長としての責任を自覚する3年生、頑張る。いざこざも、渦中に入って掻き回すのではなく、双方を汲み取りたいという、優しさで捉えようとする。
2年生は後輩ができ、かつて初めて先輩ができた時の戸惑いに、寄り添おうとし、また先輩達がどう考えていてくれてたのかということも知る。色んな意志が発動し始め、そんな己に気づく。
1年生は、この前までランドセルをしょっていた。なぜ自分の思い通りにならないのか、我慢ならない。我慢ならないということで、我慢するという行動を突きつけられる。反発と、自己との対話と、社会は思いやりでできていることに、出会い始める。
そんなことを一気に感じた再会だった。
 
その初日は、意外にも彼女たちの方が何かに縛られる。
「どう演じたらいいのかわからない。」
登場人物の中で、人間は2人。あとは、木とかちょうちょとかー。
しゃべるし。
「木だから動けないから。腕が疲れる。痛い。飽きる。」
なんで動いちゃいけないの?なんで疲れるの?なんで飽きるの?
すべては、じゃあその反対になればいい。
 
もっと幼い頃にやっていたことは、
今は、やろうとしなければ、できないんだよ。
だから、あたり前なことに気づかなかった今の自分、それでも、それでいい。
すべてはゆらゆらしている時期なのです。中学生。それが良いのです。
そいで助手の私は、そこをつっつく。そのために来たんだい。
にひっ、楽しいねえって。
 
そんなワークショップの2日目は、それから約1ヶ月後。
初日の緊張が解けたのは良いが、皆の集中力が続かない。
自分が一人じゃないということと、自分が欲しがられていることを、まだ知らないのかもしれない。
知らないことってたくさんあるなあ、って最近よく思う。
例えば知っている「言葉」の意味、それを己に呼び覚まして初めて、名付けられる。
名もなきそれが身に起こって、それ自身が名前を発する。
きっと同じ言葉でも、そんなことが何度でも起きるだろう。そのたびに、それがその名前。
まだ知らなくてもいい。皆、なんとかやり抜いた。
ヘロヘロでも、すさんでいても、足を出せばいい。
 
本番の日、7/21。
心配だった。あろうことか、うまくいかないような気がして。
前回のワークショップで、皆の士気が落ち気味だったような気がして。
ちがうよ。ゆらゆらしていたんだよ。サナギだったんだ。脱皮する力をウンウン蓄えていたんだ。
もう、幕が上がった途端に、感動が駆けた。
全員が成長していくプロローグは、その数分だけで、彼女たちの生命だった。
そのままでいることの勇気に、感動したのかもしれない。
って、訳わかんない感想だよ。
よいものは、よい。
そして見事、地区1位である研究会長賞を受賞。演劇個人賞が2人。
初の県大会出場の切符を、手に入れた。
 
最後のワークショップの日は、10/2。
まず、全幕通してもらう。
一変して、良くない。
でも本人たちは、まあまあの感想。反して、表情はうまくいってないことに正直。
よくわかります、それ。
成功体験が、事実に対して不誠実になる。
でもだいじょうぶ。
不誠実になっている自分自身に、皆は誠実だから。
その証拠に、この日の彼女たちの集中力はすさまじかった。
途中にお昼を挟んだ以外で、約7時間。
欲しくて欲しくて仕方なかったんだ。
何が?
わからない。欲しがってるのかすらも、わからない。
そんなもやもやしている自分を、無いことにしなくていい。
もやもやなのだから、その何かは、あるってことだ。
 
来週は文化祭、そして12月は県大会本番。
欲しいご褒美が明確な時、また新たな挑戦がある。
これまたちょっと厄介だけど、まあ、気の持ちようだよね。
気の持ちよう、気持ち。これから自分をどんなふうに育むかってことだから、
そんなこと、大人になっても皆まだやってるから、
気楽に、気を楽しく持って。
いざ。
 
さて、ワークショップの報告と、私からのエールでした。
なんて言って、実は私の方が皆から学んでいるのだけど、それを書こうとするとなぜかしょーもない文章になる。
言いたいのは、感謝です。
3月の震災直後に、
皆がこの本をみつけてきたこと。選んだこと。自分たちで創り上げたこと。
改めて、良い作品だと思った。
やっぱり脱帽です。ありがとう。
 
助手 日野聡