原点回帰。

 
  
原点に戻ろう。
ASCを結成するとき、3つの担当が僕にはあった。
俳優、演出、責任者。
やりたい順番は、上記の順。
グローブ座カンパニーで培った俳優としての実力を
自分の劇団で試したかった。
 
が実際は、即、
責任者、演出、俳優の順になった。
当然と言えば当然。
まずは人のことなのだ。
そうしないと進まない。
まずは、責任者としての仕事。
ものを創る前準備がなければ話にならない。
続いて、作品創りの最高責任者といえるのが、演出。
演出の方向性が定まらなければ、やはり進まない。
一番最後は一人でチマチマやっててもいいこと、
つまりは役づくり、俳優としての仕事だ。
一人でもできる部分が多いということは、
どんどん後回しになってしまうということ。
が、後に回して時間が足りずうまくいかないと、
周りの人に被害甚大、作品全体をも壊しかねないのが、
役づくりだ。
 
思えば。
結成記念公演「ジュリアス・シーザー」のときもそうだった。
正確に台詞が入っていなかった。
一度やったことのある役なのに。
キャシアスは僕の当たり役なのに。
責任者&演出としてのプレッシャーが、記憶力を大いに弱らせた。
 
さらに思うに、
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)のこの15年は、
純粋に俳優としての自分を大切にはできなかった、
と誤解を恐れずいまためしに言ってみる。
(力になってくれたメンバーや関係諸氏の皆さん、ごめんなさい) 
だから、不平不満がいつもどこかにあったようにも思う。
一番やりたいことがいつも中途半端に終わることの
やるせなさ、後ろめたさ、欲求不満。
 
ここで一度、原点回帰。
30余年前上京してきたときの初心に戻ろう。
気持ちの問題なのだ。
一俳優としての立場を若いときのように自覚する。
その上で、いま
自分は何をやりたいのか、
自分には何が必要か、
深々と自問した後に、即行動だ。
若いときは、いまのように時間をかけず
まずは動いていた。
 
動くことにより、
必要な衝動を呼び起こす。