今回の当日配布パンフのコメントです。

何もない空間。 言葉とイマジネーション。 挑戦。 そして、北村和夫さん。
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)代表 彩乃木崇之
  
今回の「オセロー」において演出上もっとも注意した点は、嘘の排除と単純化でした。
できるだけ芝居臭さをなくす、仕掛けをなくす、もっともらしさをなくす、無駄な動きをしない、極力動かない、など。
そう心がけると、演技者が頼ることのできるものはまず相手役しかいなくなる。そして最終的に自分に力を与えてくれる存在は、もちろん観客席の皆様。
何もない空間で、人間の存在だけを絶対的なものと信じて演じていく。
そこにこそ、真実の言葉が生まれ、その空間に居合わせた全ての人間のイマジネーションを個々にかきたててくれる。
名著「何もない空間」の著者ピーター・ブルック先生の教えを、どこまで実践できるか。
ASC創立11年目の挑戦です。
 
話は変わりますが、「オセロー」という作品は僕の初舞台作品です。
21歳か22歳の頃、文学座にて江守徹さん初演出、北村和夫さんが「オセロー」初主演。
北村さんの舞台を高校の頃から観ていて、まるで自分の親父みたいだと思った。
北村さんが好きで、文学座に入った。
僕は北村さんにとても可愛がってもらい、出演しながら付き人もやらせてもらった。黒人将軍なので、全身をボディメークで黒く塗るのも、終演後それを洗い流すのも僕の仕事。
開演4時間前には劇場入りをしなくては仕度が間に合わないので、いつも僕が一番乗り。国立劇場に仕立てられた、朝倉摂さんの堂々たる舞台装置。
やるなといっても、無理な話。なにをかって?
だれもいない劇場で、本番の舞台装置の上で、オセロー役を演じることですよ。
付き人でしたから、当然台詞覚えのときも付き合うわけです。そうすると、自ずと台詞は入ってしまう。
気持ちよかったです、国立劇場でオセローを演じるのは。
ただし、北村さんのようには当然ながらいかない。どこがどう違うのかも分からない。でも自分が下手なことははっきり分かる。よって、本番の舞台で北村さんの台詞を全身で聴く。やはり上手い。感動する。
過日の5月6日、北村さんが亡くなった。
それ以来、稽古場では北村さんの声が聞こえる。もちろんオセローの台詞だ。
菊地の声に重なって、北村さんの声がしょっちゅう木魂する。
北村さんには、本当に沢山のことを教わった。芸の厳しさ、役者魂。
北村さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
北村さん、ありがとうございました。
 
 
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)第34回公演/
“4人の俳優で四大悲劇を”シリーズ決定版
 
【配役表】
[“4人の俳優で四大悲劇を”チーム]
オセロー・キャシオー ほか          菊地一浩
イアーゴー・公爵 ほか            彩乃木崇之
デズデモーナ・紳士 ほか           那智ゆかり
エミリア・ロダリーゴー・ビアンカ ほか    鈴木麻矢
 
[新人公演チーム]
オセロー           徳丸恵一
イアーゴー          藤田三三三(友情出演)
デズデモーナ         日野聡
エミリア           勝木雅子
ロダリーゴー         彩乃木崇之
キャシオー          岩崎孝太郎
モンターノー         根上尚己
ブラバンショー        阪口美由紀
公爵・グレーシアーノー    野々目良子
ビアンカ           大西伸子
布告             増留俊樹(2日・3日・5日のみの出演)
 
上記※印のように、キャスティングに一部変更がございます。
新人公演チームにてロダリーゴー役を予定しておりました野口真由子は、体調不良のため降板いたします。
替わってASC代表の彩乃木崇之が演じます。心よりお詫び申し上げます。何卒ご了承ください。
 
【御礼】
このたびは、ここ数年いつもお稽古場としてお借りしているレインボーコート参宮橋スタジオのオーナーであり
女優さんの井口恭子さんには、リハーサル期間中に若手を中心に特別に演技ワークショップを実施していただきました。
また、十数年来のお付き合いをさせていただいている衣裳プランナーかつ製作者の
友好まり子さんにも、今回衣裳協力でお力をお借りいたしました。
さらに、1年前の「メジャー・フォー・メジャー」で作曲&ピアノ演奏で活躍してくれた若き才能飯田彰子さんが、劇中歌「柳の歌」を今回も作曲してくれました。
この場を拝借し、厚く御礼申し上げます。


【次回公演情報とオーディション】
 ●ASC第35回公演「お気に召すまま」または「から騒ぎ」または「恋の骨折り損」  
2007年11月中旬 ASCにとっての初めての劇場にて(お楽しみに)
[キャスト・スタッフオーディション⇒2007年6月24日(日) 詳細は受付にて]