本音と優しさ

2012.10.07
文化庁ワークショップの報告・本音と優しさ
(以下の記事は、助手として同行した日野聡子のブログより転載したものです)
(今回のワークショップほど緊張したことはこれまでありませんでした。それほど責任の重いものでした。)

ご報告が遅くなりましたが、先月10/7に再び神明中学校へ文化庁派遣事業によるワークショップに、彩乃木さんの助手として行ってきました。
3年生は一部引退し、2年生から新部長・副部長が決まり、新体制でのスタート。
約3週間後に行う文化祭での舞台上演に向かっていた。
 
今回ほど、予測の立てられないワークショップは初めてだった。
前日に作品の変更、新体制はどう動き始め、部員たちの状態は。
手がかりがなさすぎて、ありすぎて。
そこで、素直に質問することから始まった。
今、どんな問題があるか。
けれど皆、その核心部分を口にしようとしない。
私が今回とても感じたのは、
皆、非常に人に優しいということ。
自分を置いて、相手を思いやっている。
それが、本音を口にしないことを自分に選択させている。
人を傷付けたくない。
そこから、本音を口にすることは悪い事、としてしまっている気がした。
 
人と良い関係を築きたいから、
ちょっとしたことは自分が我慢すればいい。
その時は、それでうまく流れた気がする。
飲み込んでみた。
けれど、段々その本音は体の中で暴れ出す。
それを抑えつける為に、また色んなエネルギーを使う。
相手の為に飲み下したはずなのに、そのエネルギーは相手にも伝わってしまう。
互いを気遣い合って、苦しくなって、よくわからなくなってくる。
  
その人と良い関係をずっと続けたい。
大好きだ。
その為には、「ちょっとしたことだから」と飲み下そうとしているその本音は、きっと、その時点で解放してやった方が良い。
そのまま吐き出したら、険悪になるかもしれない、傷付けるかもしれないじゃないか。
でも意外とそんなことはなくて、その為に工夫が要って、
その工夫が、結構難しくて、でもうまくいくとすごくうまくいく。
その喜びは、相手にも伝わる。
工夫は明るい。
自分の立場とか関係によって、その工夫もどんどん難しくなるけれど、
チャンスはいつもある。
 
今回も4時間余りに及んだワークショップ。
彼らは、本音をそのまま吐き出すことではなく、
思いやりをもったまま、今欲していることを、工夫し、まっすぐ口にすることを、自分自身で選択した。
そして、その結果、欲しいものを手に入れた。
想像していたよりも素敵なもの。
それは、まだ見たことのないものを欲しいと願う、自分の意志を大切にして、その時思いやりだけはどうしても外さなかったから。
本音は大事にする。
思いやりはもったまま。
だから工夫する。
脱帽する思いです。
そんな彼らの文化祭本番は、10/31だった。
今回は私は残念ながら観に行けなかったけれど、きっと素敵な上演になったことと思う。
見失いがちなものを、彼女達を思うと改めて教えられる。
たとえ失敗してもいいから本音を口にする工夫、そのチャレンジの回数を、
見守ってあげるのが大人の役割。
その為に、私自身がもっと回数を増やすことを心掛けたい。
チャレンジは、恐いけれど、希望だけは確実にある。
いつも本当にありがとうございます。
感謝だけも、いつも確実にある。それも本音。それが一番の本音。
 
助手 日野聡