作品紹介

DMに同封する作品紹介文です。
 
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)第33回公演
創立10周年記念公演シリーズ第3弾『ジュリアス・シーザー
   〜 抜本的改革と人間の尊厳、
       “雌(おんな)がいて、雄(おとこ)がいる“ 〜
 
ひとつの流れが生まれ、その流れに形ができていき、その流れがあるおさまりを見せていくとき、そのおさまりに疑問を持つ人間が出現し、また新たに流れを生み出していく。
 
こうしたことは過去から現在、そして未来において、いつの時代にもどんな場にも出現します。抜本的改革、革命と呼ばれる動き。それは新しい流れを生もうとする、昨日・今日より明日へ、過去・現在より未来へ、という前向きの意志が作り出していくものです。
 
しかし。人間の作り出す社会において、時に抜本的改革というものは、従来の流れを担う人間の死を意味します。それは立場としての失墜だけではなく、暗殺という行為をもって特定の人間の生命自体の終幕を起こす場合もある。
  
前向きの意志と、人間の尊厳に対しての否定。プラスとマイナス。
ASCでは「ジュリアス・シーザー」という作品を通して、この「抜本的改革と人間の尊厳」について掘り下げます。
  
そして第二点として、ASCでは女性の存在を考察の材料としてあげていきます。男性が意志をもって抜本的改革に臨もうとするとき、その行動には女性の存在の影響力が潜在するのではないか。雄(おとこ)は雄(おとこ)としてのみ存在するのではなく、雌(おんな)がいてその行動の根を我が身に我が心に育んでいくのではないか。
 
ローマ政治におけるジュリアス・シーザーとブルータスを中心とする周辺の人間のドラマ。この二点の人間のもつ普遍的ともいえるテーマを、そのドラマの展開を通してASCでは探求していきます。
 
ASCでは10年前、結成記念公演としてこの「ジュリアス・シーザー」を上演しています。シェイクスピア作品の上演に意志をもって、あえて「アカデミック」の名をつけて産声をあげたASC。
その創立10周年記念公演シリーズのファイナルとして、ASCでは結成記念公演と同じ演目である「ジュリアス・シーザー」を選択しました。ASCも10年を経過し、現在抜本的改革を意識する時期にさしかかっているのではないか。これは「ジュリアス・シーザー」という演目選択のひとつ動機として存在しています。
 
昨日・今日より明日へ、過去・現在より未来へ。
新たな流れを再び、という意志をもって取り組むASCの『ジュリアス・シーザー』に、是非、ご期待ください。